ゴトータケシ流 オートバイ乗りの自転車遊び(第5回)

二輪ジャーナリストの後藤 武 氏といえば、オートバイ業界では言わずと知れた実践派の重鎮。おまけに陸・海・空すべてが遊びのフィールドと豪語してはばからないノリモノ遊びのプロでもある。そんなゴトー氏、どうも最近は自転車移動がアツいらしい。となれば『GOGO-GAGA!』が放っておくわけがない。半ば強制的に自転車を手渡し「ゴトータケシ流」のサイクルライフをレポートしてもらうことにした。

下町では八百屋が元気。安くて美味しい野菜、果物が沢山あるのでエンヴォイで買い物に行く。白菜丸ごと一個で標準増備のパニアバックは余裕で収納可能。ただし、オシャレさに欠けるのが残念なところ。


撮影仕事だってこなせる偉いヤツ

不詳ゴトー、90年代はサクラメントで飛行機やヘリを飛ばしていた。日本に帰国後も2000年代にかけて度々渡米し、セスナ172を借りてクリアレイクやユーレカ、アルケータといったノーザンカリフォルニアの街まで飛んでいって滞在しては独特のノンビリした雰囲気を楽しんでいたものである。


ちょうどその頃、ベイエリア(サンフランシスコ湾周辺の地域。ノーザンカリフォルニアに含まれる)で生まれたのがロングテールバイクだった。クルマを持たない若者が買物やサーフィンに行くのに使っていたのだとか。

カスタムされたマングース・エンヴォイを眺め、あの頃、ゴトーの翼の下でコイツの歴史が生まれ育っていたのかと思うと感慨もひとしお。何やら愛おしさがこみ上げてくるのであった。

じつはいま、ちょっとやらかしてしまってシルバラードは長期入院中(自分でATF交換した際に測り方を間違えて量が少なかったため。修理費用はなんと80万円!)。

期せずしてエンヴォイが仕事のメインマシンとなった。

ゴトーが所有するシボレー・シルバラードZ71。フルサイズのピックアップトラックで積んで良し、走って良しの万能車。エンヴォイの車体色はこの車を模したものだ。


こいつは紛れもなく「アメ車」である

先日、動画撮影の仕事で某メーカーへ行った際の足もエンヴォイである。

カメラ2台と交換レンズ、マイク、パソコンは振動対策をして左右のバッグに放り込み、動画用の三脚と一脚はキャリアに縛り付ける。総重量約20キロだが、こんな荷物など余裕である。安定性はまったく低下しないし、重さも感じない。

目的地までは10kmあったが、気持ち良く走っていたら完全に目的地を通り過ぎていた。
「アレ、まあでも移動も楽しいからいいか」結局、倍近い距離を走ることになったがそれも苦にならない。

アメリカ生まれのデッカイ自転車に乗っていると気持ちも大きくなるものである。

この日の取材用機材。これくらい搭載するなら余裕。バックは車体にゴムバンドで固定できるので硬質な振動が機材に伝わることはないが、大きく揺れるのでカメラは緩衝材で包むなどの対策をしている。
バッグに入らない三脚、一脚はキャリアに固定。ただしキャリアは荷掛けロープがかけにくく荷物を固定しにくいので、もう少し改善したいところ。純正のキャリアはボルト穴がたくさん設置されていることからも分かるように、あくまでもベースであり、使い方に合わせてシステムを構築することが前提となっている。


エンヴォイで現場に現れると「エー、自転車で来たの?」とか「変わった自転車だねえ」と話が弾むことが多いのだが、カスタムが終了してからはさらに食いつく人が増えた。

そしてちょっと乗せてあげると皆大喜び。「オレも買う」と興奮して語る人は何故か皆アメ車好き。

デッカイクルマが好きな人だから自転車もデッカイのに惹かれるのか、それともシルバラードカラーにペイントしたのが効いているのかは不明だが、何にしてもENVOYシルバラード・オーバーランドエディション(ゴトー命名)はどこに行っても大人気である。

ロングテールバイクで西海岸をイメージしつつ、今日も下町生活

しかし、エンヴォイが都内で大活躍するのはなんといっても日々の買い物である。

大量に買物をした時、歩いて持って帰ってくるはヒジョーにしんどいもの。ということでゴトーの住む墨田区では、ジイさんもバアさんも素敵な奥さんもママチャリを使っている。カゴ付きのママチャリは多少の荷物なら便利このうえない。

しかし、荷物が多くなったら話は別。米10㎏なんて積んだら皆フラフラしながら走っている。つい「ロングテールバイクお貸ししましょうか」と言いたくなるくらいである。

エンヴォイなら一升瓶まとめ買いしようが、缶ビールを箱買いしようが余裕なのだ。

ということで日々の生活に大活躍なのだが、白菜や缶ビールを積んで走っていると、今ひとつカリフォルニア的オシャレさに欠けるのが残念なところ。せっかく素晴らしい自転車が来たのだから、下町的オヤジ生活から脱し、西海岸的ライフスタイルを目指したいと考えている今日このごろである。

元教え子(ゴトーは専門学校の講師もしている)のコータが遊びに来てエンヴォイで出かけることに。「都内だとこういう自転車もアリですね」と中々好印象の様子。「リモートワークが多いから、コーヒーとサンドイッチを積んで公園で仕事するのも良いかも」などと妄想が膨らんでいる様子。大柄だが走れば重さは感じないし、安定性が良くて快適というのがコータのインプレ。ゴトーの取材用機材20㎏を積んだままだったが、まったく問題なかったようだ。
ゴトーの事務所では元教え子達が集まり、メキシカンパーティーなどをよく行うので(いまはコロナ禍で難しくなってしまったが)、大量の食材が必要になる。そういうときにはエンヴォイが大活躍。安くて良い肉、冷凍のエビの塊などを求めて色々な店をハシゴする。

著者プロフィール

後藤 武(ごとう・たけし)

航空機雑誌『シュナイダー』や二輪専門誌『 CLUBMAN』(いずれもネコ・パブリッシング)の編集長を経てフリーの編集ライターに。オートバイ、クルマ(主に4WD車、アメリカ車)、航空機等、乗り物記事を多く手掛ける。『2ストロークマガジン』(ネコ・パブリッシング社発行)編集長を務める傍ら、『DAYTONA』誌(ネコ・パブリッシング) や『MOTONAVI』誌等のメディアで連載企画も展開している。若者向けWEBメディア『MotoBe』、『CarBe』アドバイザー。レッドブルエアレースのTV放送の解説など 。



GoGo-GaGa

クルマ、モーターサイクル、自転車、ヒトに「自由」を与える乗り物の魅力を発信するWEBメディア