ジムニーに似合う自転車が欲しい(Vol.1)

原始的なMTBで「冒険」を取り戻す!


せっかくジムニーに乗っているのですから、山へ行くためのモチベーションが欲しいところです。そこは我ら乗り物好き、ずばりマウンテンバイク以外の答えはないでしょう。


日本の自転車シーンではすっかりマニアックなジャンルになってしまったMTB(マウンテンバイク)ですが、面白さは随一だと思ってます。何せMTBでトレイルを走った人は、ひとりの例外なく「サイコー!」って歓喜の声を上げますから。


MTBのトレイルライドというのは、主に木々の間を縫うように延びるシングルトラックを走って遊びます。モーターサイクルでも林道を走ると気持ちが良いものですが、MTBはそれよりもさらに自然との距離が近い。路面からのインフォメーションもダイレクトで、自然との強烈な一体感が味わえるんです。

じゃあ何でそんな面白いものがいまいちブレイクしないのかというと、ひとつは走る場所ですね。フィールド。日本はそもそも自由に走れる未舗装路自体が少ない。中にはMTBで乗り入れできる登山道やハイキング道もあるのですが、ネットなどでその情報を知ることはできません。トレイルライドの基本マナーを知らないライダーが沢山やってくると、やがてトラブルが発生して乗り入れできなくなる可能性があるからです。

MTB用に整備された素晴らしいフィールドも全国にあるものの、そこを利用するとなると今度は費用的にも時間的にも気軽な遊びにはならない。スキーやスノーボードをやるのと一緒です。フィールドまでアクセスするのにクルマも必要になりますしね。


そこで私は考えました。じゃあ河川敷や土手といった、身近なオフロードで楽しめるMTBを作ればいいじゃないの、と。


クルマやモーターサイクルと同様に、MTBも年を追うごとに進化しています。最新の高性能モデルは激しい起伏でも常にタイヤが路面をトレースし、何事もなかったように走ってしまいます。行き過ぎた高性能が逆に遊ぶ「機会」を奪っているとも言えるんですね。

車体の性能が高いと相応に難度の高いフィールドを走らないと物足りなくなっちゃいますから。


I.D.E STOREに置いてあった『THE VINTAGE MOUNTAIN BIKE』という海外の本を参考にしつつ仕様を吟味。その名の通り、創世記のMTBがずらりと掲載されています。写真のバイクは私の理想にかなり近いスタイルですね。


もともとMTBのルーツは「遊び」でした。

サンフランシスコのヒッピーたちが急勾配の未舗装路を自転車で駆け降りて速さを競うというおバカな遊びをおっぱじめたんですね。1970年代のことです。

もちろん当時はMTBが存在しないので、未舗装路を走っても音を上げない自転車を改造して作るしかない。彼らはやたらに丈夫だった戦前の実用車やビーチクルーザーのフレームに太いタイヤをかませ、モーターサイクル用のハンドルバーやドラムブレーキなどを無理くり装着した自転車を作ります。この改造車こそ通称「クランカー(ぽんこつ車の意)」と呼ばれ、後にオフロード専用設計車、つまりMTBへと発展するのです。ここでモーターサイクル好きの方はピンと来るかもしれませんね。そう、近年、流行のスタイルである「スクランブラー」と極めて似た存在なのです。

こちらはゲイリー・フィッシャーやトム・リッチーといったキーマンの話を軸に、MTBが誕生するまでの軌跡を追ったドキュメンタリー作品、『クランカーズ』。とても面白いが残念ながら現在は絶版のよう。


クランカーが誕生した当時の映像を見ると、走っているのはシングルトラックよりもうんと道幅の広い、いわゆるジープロード。現代のMTBで走ったらどうってことのない道ですが、クランカーだとドリフトしまくりでスリル満点。子どものようにはしゃぎつつ、わりと洒落にならなぐらい派手に転倒してたりします(笑)


そういえば、昔にMTBの生みの親の一人とされているゲイリー・フィッシャー氏にインタビューしたことがあります。そこで「現在のMTBと比べると、当時の『クランカー』ってどんなもんだったんですか?」って素人丸出しの質問したら「HA HA HA そりゃあ、おハナシにもならない代物さ」って答えてくれたんですけど、どこか嬉しそうだった。パフォーマンスは低いけどそれはそれで楽しかったぜ、という言外に秘めた思いを表情から感じ取れましたね。



ハナシを戻します。

気軽に遊べる場所が少なく、ハードウェア自体も専門的になりすぎてしまったMTB。

その楽しさを自転車マニア以外の人……つまりクルマ好きやモーターサイクル好きなどにも共有できるよう、あえて「性能の低い」MTBを作るというのがこの企画なのであります(前置き長い)。


第一回目はまずベース車のチョイスから。

ひと頃、クランカーをモチーフにした完成車が数社からラインナップされていたのですが、2020年現在はどこからも出ていないよう。いつも頼りにしている自転車ショップ「I.D.E STORE」の井手さんに相談してみたところ「ウチに丁度良い中古フレームがありますよ」とのこと。現物を確認すると、変速機が付けられないシングルスピード用のフレームでしたが、偶然にも我が81年式ジムニーと同じカラーではないですか。
よし決まりだ、決まり! こいつでクランカーを作るべ。

BMXで有名なARES BIKESの「FOLK GAMBLER」というモデルのフレームをベースにすることに。もともとオールドMTB風のシングルスピードの自転車として完成車販売されていたものなので、全体のシルエットは文句なし。細身かつ頑丈なクロモリ製で、レトロな三枚肩のフォークが組み合わされています。ディスクブレーキ仕様。


私になりにクランカーのポイントを定義すると下記のような感じになります。

・前後リジットのホリゾンタルフレーム

・26インチ径のタイヤ

・モトクロスバイク風のハンドルバー

・金属部品はレトロなポリッシュ仕上げ

調達したパーツたち。次回以降の記事で詳細を説明したいと思います。


ブレーキは現代的な油圧ディスクブレーキです。再現性を重視するならブレーキはドラム式がふさわしいですが、実際に山を走って楽しむらなまあこちらの方が良いかなと妥協しました(そもそもフレームがディスクブレーキ対応でした)。

とりあえずフレームと部品をささっと集めたのでお次は完成した姿をお披露目できると思います。

(文・写真/佐藤旅宇)

見るからにフツーの自転車ショップとは異質の佇まいですが、実際その通り(失礼w)。店主の井手さんはロードバイクも含め、あらゆるスポーツ自転車に精通していることはもちろん、スタイリッシュで「遊び心」もちゃんと理解してくれる方です。こんな自転車が欲しい、とイメージを伝えれば色々と提案してくれますよ。今回のように中古フレームをベースに理想の自転車を組み立ててもらうことだってOK。


SHOP INFO

I.D.E STORE

東京都杉並区高円寺北1丁目21-5

電話/03-3389-6509

営業時間/12:00~20:00

定休日/月曜日




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