私はこんなジムニーを手に入れた
ジムニーは悪路のみならず時空をも超えるクルマじゃないでしょうか。
ジムニーを取り巻く時間の流れは他の車とまったく違う。何せ90年に登場したJA11が現在も中古市場で現役バリバリなのですから。
中古市場で廃れないというのはつまるところ人気があるからにほかなりません。私もそうでしたが「もし経済的に余裕があったらアウトドア遊び専用にジムニーが欲しい」そんな人が今も昔も大勢いるわけですね。
買う側がそういう割り切ったメンタリティのため、ジムニーは普通の中古車とはまったく異なる市場が形成されています。お店に並ぶジムニーの中古車を見てください。丸ペンやカスタム当たり前、走行距離不明、修復歴アリなんてタマもゴロゴロしています。
つまり、他の車だったらとっくに廃車になっているような個体でも、ジムニーが欲しいって人には立派な売り物になるわけです。遊びに使うんだったら多少の不具合は目をつぶれるということでしょう。
私も“その筋”の知人に「ジムニーは自分で育てるもの」なんてことを言われたことがあります(笑)
ところがSJ10となると、現存する個体数はガクッと減ります。単純に古いクルマであることと、その後のモデルに比べて機械としての完成度がかなり劣ることが理由だと思います。とくに防錆加工の施されていない鋼板を用いたボディはとにかく錆びやすく、修復には多額の費用がかかります。
こうなると中古車としてはなかなか売りにくいことは容易に想像できます。
さて、そんな難物のSJ10ですが私が手に入れた個体のコンディションは如何なるものだったか。今回の記事ではその辺りを詳しくお伝えしたいと思います。
まずボディ。付属してきた整備手帳を見るとこのジムニーは岐阜県で新車販売されたもののようです。私で4人目のオーナーであると前の所有者の方からは聞いています。
これまで一度もショップの「商品」として仕上げられていないためか、自然なヤレ感が印象的です。
どうもボンネットを一度交換しているようですが、内外装の色合いの自然さからいってペイントは当時のオリジナルではないでしょうか。
フェンダー部などに錆びが出ているものの、いちおう進行しないよう補修がされています。個人的にはヘタに化粧してごまかすよりも、こうした処置の方が好感が持てますね。ただ、いずれボディの大掛かりなレストアをしなければいけないでしょう。
ちなみにボンネットに冷却スリットが設けられたのはSJ10のⅡ型から。それ以前のLJ10やLJ20、SJ10Ⅰ型と見分けるポイントのひとつです。
お次はインテリア。荷室はご覧のとおり錆びがなく、子ども椅子のような折りたたみ式リアシートのコンディションも抜群。これだけの荷室容量があれば、一人でキャンプに行くぐらいならまったく問題ないと思います。
SJ10のシート表皮は(この時代の軽自動車の例に漏れず)とても脆く、ボロボロになっているのが普通です。私のSJ10はご覧のように縫い目が裂けているものの何とか形をとどめています。ちなみにこのシートはシートレールではなく、ボルトによる固定式。もちろんリクライニング機能もありません。
ドアや天井の内装もオリジナルのままです。いかにも簡素なビニールレザーが使用されていますが、コンディションはかなり良いと思います。
錆びやすい床にはいくつかの補修跡があるものの、穴あきなどはなし。青い塗料は錆び止めに塗られたものなのでしょうか? よく分かりません。
余談ですが、減っているのか、はたまた調整不足なのかは分かりませんが、クラッチがかなり手前で唐突につながるため、非常に運転し難らく坂道発進などはいまだに緊張を強いられます。 今後原因を探ってみようと思ってます。
インテリア関係で唯一問題だったのがドアのガラスを保持しているガラスランチャンネルという部品。経年劣化でまったく機能を果たしておらず、窓を閉じて走行するとガラスがガタガタと暴れておりました。
このままではガラスを破損しかねないので汎用部品で流用できるものはないかと探していたところ、何とまだ純正部品が出ることが判明。こうしたゴム部品は旧車を維持するうえでネックになるものですが、さすがはジムニーと感心した次第です。
こうしたコーションラベルが当時のまま残っているあたりに旧車としての素性の良さを感じます。「鈴木自動車工業株式会社」の名は1990年に現在の「スズキ株式会社」に改称されています。
ステアリングホイール、純正ラジオとおもちゃのようなスピーカーも当時のオリジナル。ラジオはいちおう音も出ますが、運転中の車内はあちこちからガタピシとうるさく、とても音楽を楽しめるような環境ではありません(笑)
昭和のアパートを連想させる質素な室内灯。スイッチを入れて健気に点灯したときは思わず笑っちゃいましたね。ただ、これだけだとさすがに暗いので下にUSB充電式のLEDランタンも追加で取り付けています。こちらはブラックダイヤモンドの「リモジ」という製品ですが、裏側がマグネットになっているので鉄板むき出しのピラーに張り付けるだけ。
という訳で外装、内装とも総じて状態の良い私のSJ10ですが、機関部ではすでにいくつかのトラブルが発生しております。次回はエンジン編としてその辺りも含めて詳しくリポートいたします。
(文・写真/佐藤旅宇)
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