スーパーカブは肉体の一部である

スーパーカブの魅力を極私的に説く

このところ何かと話題のスーパーカブ。登場から60年以上も経過していながら、未だ実用バイクの分野では敵なしの絶対的なブランドとして君臨してるんだから凄いとしか言いようがない。しかも、ここにきてクールな趣味の乗り物としても人気が急上昇という凄まじさ。

昔っからスーパーカブを趣味として乗ってるライダーは一定数いましたけど、それが今やお茶の間(表現が古い)レベルですから。

もちろんウチも持っとりますよカブ。92年式のC50ね。排ガス規制前の4.5馬力仕様。ノーマルでも最高速65㎞/hという俊足だ。十数年前に知人からタダでもらったものですが、入手直後にキャブをOHした以外はこれといったトラブルもなく元気に動いています。
主に日常の足として使ってますが、一度だけ神奈川県から福島県までキャンプツーリングに行ったことあります。全然ガソリン食わないうえに無料のキャンプ場を利用したので一泊二日なのに1500円ぐらいしか使いませんでしたね。それで2日間目いっぱい楽しめるんだからコスパ良すぎて笑っちゃいますよホント。

まあスーパーカブの魅力って色々ありますが、個人的には汎用機械ならではの「物足りない」部分こそ、他のオートバイにはない面白さだと感じてます。ただ走っても、ただ眺めても、そのままではどこか物足りない。その足りない部分をライダーの努力や工夫で補うことで、独自の遊び方やカルチャーが生まれたんだと思いますね。


もっともこれは私が持っているような「自転車以上、オートバイ未満」な旧式のカブの話であって、現代のCT125やクロスカブなどには当てはまらないかもですね。そのままでも走行性能は充分だし、ルックスもいい。相変わらず軽便な乗り物には違いありませんが、Tシャツ姿でオープンフェイス被ってちょいと風が気持ちいい場所まで、みたいな気軽さは薄れました。スピードレンジだって格段に高くなりましたし。

先日、天気が良かったの外で原稿書きでもしようとカブで出かけてみたのですが、まあダメですね。夏の日差しにコバルトブルーの空、さらに入道雲なんか出てたりして、どうにも仕事モードになんかならない。

「このまま海まで行ってしまおうか」

最初は砂粒程度の大きさだったそんな思いつきが脳内全体を支配するのにさほど時間は掛かりません(笑)。で、仕事サボって行ってきましたよ湘南へ。

カブって不思議なもので、お仕事モードで運転するとわりかし無機質な機械なんですが、ひとたび遊びモードで運転すると急に排気音やらギアチェンジやらハンドリングやらがエモーショナルになるんスね。心の在りようが反映されるわけです。極端にいえば自分の肉体の一部みたいなもんですよ。
人間の身体感覚を逸脱しないパフォーマンスをもつ機械だからってことなんでしょうか。イニシアチブがあくまでライダーの側にある。私はこれこそ他のオートバイとは異なる、カブにしかない魅力って気がしています、ハイ。

(文・写真/佐藤旅宇)


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