「第22回 カフェカブミーティング in 青山」レポート
11月3日(土)、4日(日)の二日間、東京港区のHondaウエルカムプラザ青山で「第22回 カフェカブミーティング in 青山」が開催されました。このイベントはスーパーカブオーナー同士の親睦を深めることを目的に1994年から毎年開催されているものです。
見どころは何といっても全国から集った約700台(二日間の合計)ものスーパーカブが一堂に展示され、来場者が人気投票を行う「カフェカブコンテスト」でしょう。
スーパーカブの本質はご存知の通り実用車です。しかし、中古車や部品の流通量が圧倒的に豊富かつ安価であることに加え、多少のメカの知識があれば自分で整備できるシンプルな構造なのでカスタムの素材としても人気があるんですね。
実際、ここに集まる車両のほとんどはオーナーの手によって何がしかのカスタムが加えられています。これが他の車種では考えられないほどカスタムのバリエーションが富んでいるので、眺めているだけで非常に面白い(ちなみに私も10年前に知人から92年式のⅭ50というタイプのスーパーカブをタダでもらい、それを自分で整備・カスタムしつつ日々愛用しています)。
コンテストに参加するスーパーカブは泥臭さ全開(失礼)のロングツーリング仕様から、とにかく速さを追求したチューニング仕様、古いモデルを美しくレストアしたもの、さらにフレームまで加工した本格的なチョッパーやボバースタイルまで実にさまざま。スーパーカブのオーナーは年齢層がやたらに幅広いのも特徴なのですが、多彩な車両たちはそんなオーナーたちの趣味嗜好を映し出す鏡とも言えます。
個人的な意見ですがカスタムバイクの真髄って「意外性」にこそあると思うんです。これまでの常識や既成概念をぶち破って創造する行為だからこそ、いつの時代も不良の反骨精神を刺激するのではないかと。そう考えるとスーパーカブほどカスタムのベースとして相応しいバイクはないのではないでしょうか。何せ累計で1億台以上も生産され、世界中の道を走っているのですから。「新聞配達で使われているバイク」と言われれば誰もがすぐにその姿カタチをイメージできる。スーパーカブはそういう既成概念が強固に形成されているからこそ、カスタムしたときのインパクトが他の車種と比べて強いと思うのです。葬式のコントがより笑えるのと同じ理屈ですよ(ちょっと違う?)。
「釣りはフナに始まりフナに終わる」という釣り人の格言をもじって「バイクはカブに始まり、カブに終わる」などと言ったりしますが、これはあながち間違いではないと思います。10代の頃にスーパーカブでバイクの楽しさを知り、そこから大型バイクなどを乗り継ぎ、老いて体力が衰えると再びスーパーカブに戻ってきた。そういうケースは本当に良くあるんですね。いずれにしてもこれはスーパーカブにバイクとしての魅力がちゃんとあるからこそ成立する話です。風を切って走る爽快感や、マシンとの人馬一体感。機械いじり面白さ、苦労。エンジンの鼓動感にエグゾーストノート、レース……私は原付から大型までかれこれ20台以上のバイクを乗り継いでいますが、バイクの楽しみの7割ぐらいは50㏄のスーパーカブでも享受できたと思っています。乱暴に言ってしまえば二輪免許なんてなくたって「バイク乗りの風景」は知ることができるんですね。
という訳で、ここからは11月3日に展示されたスーパーカブ(の一部)を写真とともにご紹介しましょう。深遠なるスーパーカブの世界へようこそ!
今年はスーパーカブの生誕60周年という節目の年ですが、その記念すべき初代モデルがこのⅭ100と呼ばれるOHVのエンジンが搭載されたタイプです。乗り降りしやすい車体形状や前後17インチホイール、シリンダーが水平にレイアウトされたエンジン、クラッチ操作の要らない自動遠心クラッチ採用のトランスミッション、樹脂製のレッグシールド、フルチェーンケースといったディテールは現行モデルにも受け継がれていますね。こちらはオーナーがフレームから組み上げて完成させた車両とのこと。農村で使われていた車両をそのまま青山に持ってきたようにディスプレイされていました。
美しいミントグリーンにペイントされたこちらのカブのオーナーは意外にも50代ぐらいの男性でありました。ベースとなったのは90㏄のⅭ90で、東南アジアで流行している「ストリートカブ」と呼ばれるスタイルを参考に自身でカスタムしたそう。ただ、リアフェンダーのカットだけは業者にフレームごと宅急便で送ってやってもらったとか(この年式のカブは鋼板プレスフレームのためリアフェンダーはフレームの一部)。特殊な加工や特注部品などはなるべく用いず、市販されているカスタムパーツを使って仕上げてある。日常的に乗れるようエンジンや駆動部、タイヤサイズといった走行性能に大きな影響を与える部分にはあえて手を加えていない。ヘルメットホルダーも付いていますね。オーナーは日々の通勤でもこのマシンを使っているそうで、この日も千葉から1時間半かけて来場されたとか。ご苦労様です!
こちらはスーパーカブの元のフォルムを崩すことなく各部をモダン化した高度なカスタム。フロントサスペンションが純正のボトムリンク式から高性能なテレスコピック式に換装されているのですが、ブレーキはなぜか旧来のドラム式のままというのがオーナーのこだわりを垣間見えて面白いですね。WGPマシンのようなLACERの二本出しマフラーは当然カブ用ではないと思いますが「無理やり感」なくキレイに装着されています。私の隣にいた方は「センタースタンドを外さずにこのマフラー付けたんだ、すげぇ」と感嘆の声を上げておりました。さすがカブオーナーは見るところが違いますね。
最初に紹介したC100もそうですが、ジオラマ的な展示が多いのもこのイベントの特徴です。どのバイクよりも日常的に親しまれてきたスーパーカブならではですね。このアイスキャンデー屋さんを模した展示は昔の広告をオマージュしたもののようです。車体と木箱が同じようにくたびれていて雰囲気が出てますね。スーパーカブは登場当初、その斬新な宣伝でも大きな注目を集めました。スーパーカブが実際に活躍している現場の様子をいま風に言えば「リアル」に写真に収め、それを週刊誌などの広告に使ったのです。この辺りのことはホンダ公式サイトに詳しいのでぜひご覧になってみてください。
栃木県佐野市から50㏄のスーパーカブで来たというこちらの二人はまだ18歳。「周りの友達はスクーターに乗っている子が多いんですけど、僕はスーパーカブのカタチが好きなので……」と若者らしくシャイに話してくれました。今回のイベント参加は二人にとってちょっとした冒険だったようで、あちこち道を間違えながら何とか到着できたそう。クルマの免許を取ってもスーパーカブには乗り続けます、とのこと。何だか嬉しくなりますね~。
かつてホンダの用品部門であるホンダアクセスから「カブラ」というスーパーカブ用のドレスアップキットが発売されていました。この籐カゴを載せた二台はまさにそのカブラキットを装着したものですね。ハーフキャップタイプのヘルメットが収納できる膨らんだサイドカバーがじつにエレガント。青と黄色のペイントがセンス良く、お話を聞こうとオーナーさんが来るのをじっと待っていたのだがついぞ会えず。残念。
こちらはスーパーカブ乗りの間では有名な一台ですね。2005年式のスーパーカブ90DXの外装のほとんどを水牛のヌメ革で覆ってしまった中々に変態度の高い(誉め言葉)カスタマイズです。ミシンは使わずすべて手縫いで仕上げられているようで、ここまでやるのに恐るべき時間がかかっていることでしょう。中身についてもエンジンのボアアップやビッグキャブの装着等、ひと通り手を入れてあるようです。
細かな部分まで美しく入念に仕上げられたチョッパーカスタムですね。大きなバイクでここまで大胆なカスタムをするとなると膨大な費用と時間がかかってしまいますが、スーパーカブであればそこまでハードルは高くないです。近年はカブをベースにこうしたカスタムを行ってくれるショップも増えています。
初々しいこちらのお二人もまだ10代。もともと別々にスーパーカブに乗っていたそうですが、SNSを介して知り合ったのだとか。右の男性は何とまだ17歳。スーパーカブで新潟までツーリングに行くなど、年齢を考えればじつにアクティブなバイクライフを送っているようです。「子どもの頃から働く乗り物が好きでスーパーカブに乗るようになりました。最初は通勤で使っていましたが、いまや完全に趣味のためのものです(笑)。カブを通じて行動範囲や交友関係が広がっていくのが面白いですね」とのこと。二人の前にあるスーパーカブ110は左の女性の愛車ですが、シートカバーを自作するなどカスタムを楽しんでいるご様子。「両親にバイクに乗りたいと話すと最初は反対されましたけどスーパーカブならいいよと言ってくれたんです。まだ購入して3ヵ月ほどですが千葉の館山までツーリング行ったりなど満喫してます!」
スーパーカブがバイク乗り以外にも広く「市民権」を得ていることを感じさせるエピソードです。最近はインカムでおしゃべりしながらツーリングするのが楽しいとのこと。うーん、いかにも新しい世代のツーリングスタイルだなあと感心してしまいました。
CT110は未舗装路も走れるよう各部の仕様が変更された派生モデル。こちらの個体はトップボックスを装着しただけに見えてじつはかなりマニアックなカスタムが施されておりました。オーナーはもともと1300㏄のホンダ X4で日本全国を走り回るツーリングライダーでしたが、2年前にたまたまこのCT110を手に入れたことですっかりハマってしまったとか。「スーパーカブの欠点は燃料タンクの容量が小さいことなので自分でサブタンクを作ってリアキャリアに搭載しています。通常は増設したサブタンクの燃料で走り、空になったらメインタンクの燃料を使うという仕組みになっています。サブタンクにはメインタンクとほぼ同量の4.6リットルの燃料が入るので航続距離が飛躍的に伸びましたね」。オーナーは御年65歳。夕方にイベントが終わったらそのまま静岡の掛川まで自走して帰られるそう。以前はしまなみ海道まで自走し、3泊4日で1400㎞を走破したこともあるそうです。いやはやカブ乗りの耐久力はバイクに負けず劣らずじつにすさまじいものがあります。
(文・写真/佐藤旅宇)
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