ゴトータケシ流 オートバイ乗りの自転車遊び(第一回)

二輪ジャーナリストの後藤 武 氏といえば、オートバイ業界では言わずと知れた実践派の重鎮。おまけに陸・海・空すべてが遊びのフィールドと豪語してはばからないノリモノ遊びのプロでもある。そんなゴトー氏、どうも最近は自転車移動がアツいらしい。もちろんそんな面白い話を『GOGO-GAGA!』が放っておくわけがない。半ば強制的に自転車を手渡し「ゴトータケシ流」のサイクルライフをレポートしてもらうことにした。


オートバイ乗りから自転車乗りへ

ゴトータケシよ、お前もか!


「ゴトーさん、自転車で面白いことーやりましようよ」

このサイトを運営する佐藤旅宇くんからそんなメッセージが届いた。

陸海空の乗り物を制してきたゴトーだが、じつは自転車は未知の分野。何も知らない。

特にこだわりもなく、もらったMTBと通販の安いミニベロで満足していたくらいだった。ただ、自転車で移動すること自体は好きで、40㎞くらいまでの移動なら常に自転車を使っている。

「マッハでレースしているような人がテキトーな自転車に乗ってちゃいかんです!」

彼はそう力説する。

「そーなの?」とこの時点ではイマイチ乗り気でないゴトー。

「面白そうなのがあるんですってば」と見せられたのがマングースというメーカーの「エンヴォイ」という自転車。

「コイツで自転車版シルバラード作ったら面白そうじゃないですか?」とグイグイ来る。

シルバラードとはゴトーが乗っているピックアップトラックだ。いつも遊び道具満載にして日本中に出かけている。その自転車版を作ろうというのである。「コイツ、こんなに押し強かったけかな?」と思いつつも、エンヴォイに興味を惹かれ始めたゴトーであった。

アメリカの自転車メーカー、マングースが販売している「エンヴォイ」。荷物が沢山積めるよう車体の後半部分をストレッチした「ロングテールバイク」というカテゴリーのモデルだ。当サイトに寄稿してくれたこともある山本修二さんのブログによれば、もともとは発展途上国の物流を支援するために開発されたという。一般的にはまだほとんど知られていないものの、現在はひとつのカテゴリーとして確立されており、数社からラインナップされている。エンヴォイの特徴は何といってもそのコストパフォーマンス。ほとんどのロングテールバイクは完成車で20万円以上するが、こちらは専用バッグ二個付きで8万8000円という破格のプライス。これで遊ばない手はないとこの企画のために1台購入した。 問 モトクロス・インターナショナル
こちらが愛車(クルマ)のシボレー・シルバラード。Z71というオフロード仕様のモデル。アメリカで購入し、向こうのオフロードをガンガン走った後、そのまま日本へ持ってきた。


ナウな自転車遊びといったら

ウナギ釣りでしょう


こう言っちゃなんだが、ゴトーは多趣味である。

カワサキのマッハなんて古いバイクをいじり倒してレースに出てるし、飛行機やヘリのライセンスを持っているので、アラスカでブッシュパイロットのトレーニングにも出かける。

カヤックフィッシングも好きで、時々離島へ大物釣りに行く。料理もやる。アウトドアでBBQパーティなんてことを定期的にやってるし、いま事務所には巨大なガスコンロを設置中だ。

そして梅雨時から夏にかけて夢中になっているのがウナギ釣り。天然ブリブリのヤツが事務所近くの川で釣れるのである。


ウナギ釣りの足は自転車だ。都心ではクルマなんて不経済だし、駐車場所を探すのにも苦労することが多い。しかし道具一式背中に担ぎ、帰りはウナギを入れたクーラーバックまで持って自転車を漕ぐのは大変だ。自転車を漕ぐたびに水が溢れて体中グショグショになる。

おまわりさんに止められて「中を見せなさい!」なんて言われ、蓋を開けたら歩道にウナギが逃げて大騒ぎになったこともある。

そんな苦労を思い出し、このエンヴォイならメッチャ快適なウナギ釣りマシンになるんじゃないかと空想してしまった。そして気がついた時には「よし、やろう!」と返事をしていたのであった。

写真が暗いけど仕事机の隣にホムセン箱を置いてウナ子を飼育しているところ。時々蓋をこじ開けて逃げ出すので常に監視しておかないといけない。ウナギは腸呼吸するので水から出ても体中にゴミやホコリをつけて乾燥を防ぎ、数日間は平気で生きている。以前、下駄箱の中に逃げ込み、知らずに掴んだ元嫁が失神したことがある。


ある日、「2ndCARS」のメンバーでキャンプすることになり、早速、旅宇くんがエンヴォイを持ってきた。実物を見ると中々面白そうな自転車だ。ヘビーデューティーな感じだし、荷物もたくさん積めそう。

「どうです、この自転車?」

「いゃー、いっぱい釣れそうだね」

「へ?」

と、若干話しが噛み合わない我々。


ウナギみたいな自転車を

ちょっとインプレッション


試走は当然ウナギ釣りセット満載である。バックにはシマノのシーバスロッド2本、リール、ロッドホルダー、ミミズを入れるミニクーラー。ウナギを入れるソフトクーラーボックスが簡単に収まった。

積載能力は中々優秀。これだったら装備が増える釣りでも対応できそう。


しかし荷物を積むとリアが重い。リアを持ち上げようとしたら電動アシスト自転車のよう。これは苦労しそうだなあ……と走り出したら予想外に軽快。

カタログ記載の車重は約23.1㎏。そこに荷物を積んだら普通の自転車二台分だ。しかし、これが疲れる重さになっていないのがこの自転車の素晴らしいところ。

スピードがのるまでに時間がかかるが、一定の速度で走り続けるのはまったく苦にならない。少しずつ速度が落ちてくる分だけ、力を入れてペダルを踏めば良い感じ。しかも重さがあるから車体の挙動も落ち着いている。エンジンのクランクマスが大きいと滑らかに回る様子に似ているかもしれない。

やっぱり動くものって、軽きゃいいってもんじゃないんだなと思った。

流し撮りをするからスピードを出せと言うので・・・苦しそうな顔になってしまった。


当初、ハンドリングが左右にゆっくりと振られるような感覚があって、荷物を積みすぎてテールヘビーになっているからなのかとも考えたけれど、これはどうやらステアリングを真っ直ぐにするスプリングのテンションが強かった為。しばらく走ってスプリングが馴染んだら、素晴らしい安定性を発揮するようになった。

ステアリングを真っ直ぐにするスプリング。停車時の安定性を考えてのものか。最初はこれに引っ張られて走行中わずかに車体が左右に振られるような気がしたけれど、少ししたらスプリングが馴染んで気にならなくなった。


先日、普段使っている古いMTBで歩道の段差を斜めに乗り上げた際、リアタイヤが大きく滑って、バァちゃんの商店に突っ込み、ビールケースの下敷きになるという大失態をしでかしたばかりだが、エンボイはこんな走り方をしても車体が安定しているし、タイヤがしっかり押し付けられているから何も不安がない。

多少の悪路ならまったく問題なく走る。太めのタイヤも良いもんだなとこの自転車に乗って思った。


太いタイヤがもたらし乗り心地と走破性に感動。ソフトな路面の多いウナギポイントへのアクセスが容易になった。


ちょっとしたダートも走行してみた(ウナギポイントまではダートが多いので必然的に)。幅広のタイヤとロングホイールベースの効果で非常に走破性が高い。今まで苦戦していたぬかるみも難なく超えていく。

雨の中も走行したが(ウナギは雨だと活性が上がる)、路面状況が悪くなると、このホイールベースと重さによる安定感が光る。ウェットでもブレーキの利きはあまり低下しないところも優秀。フェンダーのおかげで顔がドロドロになることもない。

メカニカルディスクのタッチと制動力は良好。リアがロックしにくいセッティング。ディスクに入ったスリットのおかげで雨でも制動能力の低下は少ない。
前3段、後8段の24段変速。こんなにギアいるのか? と思ったけれど、この重い車体に荷物を載せて走るには必須だった。


使いだして気になったこともある。まずはせっかくセンタースタンドがついているのに荷物を積むと倒れやすくなること。そして荷物を積んで走行している時(荷物無しで走行したことはない)、ギャップに入るとバックが上下にユサユサ揺れること。このあたりは手を入れれば改善できそう。

しかし最大のネックはガレージで場所を取ること。長さ、幅ともにバイク一台分くらいある。「ジャマなんだけど」と事務所スタッフに言われて形見が小さくなる思い。しかしこれは別な方法で解決できる。コイツで釣ってきた天然ウナギを食わせれば二度と文句など言わないはずである。

シルバラードには前輪を外してクイックリリースで固定するキャリアを装備。キャンプ設営後の買い出しなどで重宝しそうだ。



当サイトではお馴染み、高円寺のサイクルショップ「I.D.E STORE」にて今後のカスタムについて打ち合わせ。一般的な自転車カスタムとはひと味違った仕上がりになる予定。こうご期待!



著者プロフィール

後藤 武(ごとう・たけし)

航空機雑誌『シュナイダー』や二輪専門誌『 CLUBMAN』(いずれもネコ・パブリッシング)の編集長を経てフリーの編集ライターに。オートバイ、クルマ(主に4WD車、アメリカ車)、航空機等、乗り物記事を多く手掛ける。『2ストロークマガジン』(ネコ・パブリッシング社発行)編集長を務める傍ら、『DAYTONA』誌(ネコ・パブリッシング) や『MOTONAV』I誌等のメディアで連載企画も展開している。若者向けWEBメディア『MotoBe』、『CarBe』アドバイザー。レッドブルエアレースのTV放送の解説など 。

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