オートバイと旅に出る『インターセクション』 八月の太陽は容赦なくアスファルトを焼き、Tシャツ一枚でバイクに乗ってきたことすら後悔させるほどの熱気を吐き出していた。山梨県大月市――国道沿いにあるドラッグストアの前で、僕は母親に頼まれた買い物袋を片手に、ジェット型のヘルメットを抱えて立っていた。額から流れた汗が、顎を伝ってぽたりと地面に落ちる。「……あれ、ナオキくんってバイクに乗ってるんだ」その声が耳に届いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。リオだった。高校の三年間、ずっと心の片隅で追いかけ続けていた女の子。けれど、まともに言葉を交わした記憶なんて、ほとんどない。「あ、うん……」自分でも情けないと思うくらい、ぶっきらぼうな返事しかできなかった。ヘルメットを持つ手に、じわりと汗がにじむ。...02Jul2025佐藤旅宇MOTO