片岡義男『スローなブギにしてくれ』 エッセイストの温水ゆかりさんは、かつて、団塊世代の男性の “アメリカ好き” を揶揄 (やゆ) して、こう言った。 「 (私の知り合いの団塊世代は) 週末になると福生の米軍ハウスに住む友人宅に集まってバンドの練習をし、終わったら芝生のバーベキューをするのが楽しみだ、という。この世代のアメリカン・スタイルへの憧れは、のんきなまでに不滅。けっきょく進駐軍の最大の手柄は、この刷り込みに成功したことだったかもしれない」 確かに、この意見も分からないでもない。「アメリカが好きだ」という年寄りは、いまだに私の知り合いにもいる。 その基本のところには、アメ車があり、ロックミュージックがあり、(時にハーレーがあったり) 、それらのアイテムが現在の生...02Jul2020町田厚成COLUMN
ドライブにふさわしい音楽のハナシ人生初の自分のクルマ「トヨタ・スターレット(KP47)」を購入したのは1977年。27歳のときだ。 生まれてはじめて手に入れたそのクルマは、同時に、はじめて手に入れた “音楽空間” でもあったが、今から思うと、その音楽システムは情けないほどプアなものだった。純正カセットテープデッキと、AM・FMラジオ。それと、ダッシュボードの下に埋め込まれた小口径のスピーカー。音量を上げると、すぐに音が割れた。それでも、クルマを運転しながら聴く音楽は、部屋にこもって聴く音楽とは、まったく別次元の興奮をもたらせてくれた。それまで、ソウルミュージックやブルースといった黒人音楽一辺倒の自分だったが、クルマに乗るようになって、にわかに好みが変わった……とい...05Nov2018町田厚成CAR
なぜ古いテクノロジーはノスタルジーを誘うのか1年に1回ほど会う友人がいる。出身校は違うが、同年齢だ。団塊世代の少し下という世代である。その彼は、昔からクルマの好きな男で、マニアックな知識をいっぱい蓄えている。駆動系を自分で自由に改造できる時代にクルマにのめり込んでいた人なので、「ボアアップ」とか、「ソレックスの3連」とか、「2T-G」とか、もう私が30年も遠ざかっていたボキャブラリーが飛び交うような会話で盛り上がった。その彼が、「自動ブレーキ」が定着しつつあるような風潮を嘆き始めた。「ドライバーが自分で危険を感知し、緊急回避できないようなクルマに乗るぐらいだったら、もうクルマから遠ざかって生きていた方がまし」だという。内燃機関の鼓動が感じられないEVとかハイブリッド車なども、...28Oct2018町田厚成CARCOLUMN
クルマの自動運転化は人間に何をもたらすか自動運転が実現したときに見える風景自動車が “百年に一度” という変革期を迎えているといわれている。 自動車の起源を、1885年のカール・ベンツが開発したガソリンエンジン車に求めるとするならば、それから130年余。内燃機関を柱にした現在の自動車は、ようやく100年以上続いた歴史の “終わりの始まり” を歩み出したのかもしれない。 約一世紀続いた現行自動車の劇的な変化を語るキータームは、いうまでもなく、「電動化」「自動運転化」である。 ガソリン車とは異なる進化の系としてEV(電気自動車)が台頭し、そのシステム制御を可能にした IT技術をより進化させることによって、自動運転化のメドが立つようになったのだ。 このままいけば、今後ドライバー...21Oct2018CARCOLUMN町田厚成