オートバイと旅に出る『インターセクション』 八月の太陽は容赦なくアスファルトを焼き、Tシャツ一枚でバイクに乗ってきたことすら後悔させるほどの熱気を吐き出していた。山梨県大月市――国道沿いにあるドラッグストアの前で、僕は母親に頼まれた買い物袋を片手に、ジェット型のヘルメットを抱えて立っていた。額から流れた汗が、顎を伝ってぽたりと地面に落ちる。「……あれ、ナオキくんってバイクに乗ってるんだ」その声が耳に届いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。リオだった。高校の三年間、ずっと心の片隅で追いかけ続けていた女の子。けれど、まともに言葉を交わした記憶なんて、ほとんどない。「あ、うん……」自分でも情けないと思うくらい、ぶっきらぼうな返事しかできなかった。ヘルメットを持つ手に、じわりと汗がにじむ。...02Jul2025
スーパーカブで目指すところ『オープン・ロード』コイツは、今日も遅い。アクセルを目いっぱい回しても、軽トラックに抜かれ、原付スクーターにあおられる。一速から二速、そして三速。非力なエンジンが唸るたび、足裏に振動が伝わってくる。その、どうしようもない非力さが、ドロップアウトを決め込んだ今日の自分に心地よかった。朝から30℃を超える空気が、アスファルトの上で揺らめいている。Tシャツの背中はすでに汗でぐっしょりだ。橙色のジェットヘルメットの中は蒸し風呂みたいで、額を伝う汗が目にしみる。なぜこんな日に、わざわざ江の島なんか目指してるのか。自分でも理由はよくわからない。俺は暗示でもかけられたかのようにアクセルを回す。とにかく、どこかへ。どこかってどこだ?そんなこと知るもんか。「コイツ」って...30Jun2025MOTO佐藤旅宇
YAMAHA『55mph』がくれたもの もう10年も前の話になりますが、以前、私はヤマハ発動機の「Web 55mph」というサイトで編集長兼メインライターをしておりました。私より年上のベテランライダーの方はよくご存じでしょうが、「55mph」というのは、ヤマハ発動機が過去に発行していたバイクライフをテーマにした小冊子のことです。私は当時を知らない世代なのですが、『サイクルワールド』などを発行していたCBSソニー出版が制作を請け負っていたのかな? とにかく誌面デザインやビジュアルがバイク雑誌離れしていました。恐らく制作予算も。Web 55mphはそのウェブ版ということになるのですが、バイクブームと呼ばれた当時と比べるとかなり小規模な展開でした。でも、55mphというのは強...03Jun2025佐藤旅宇MOTOCOLUMN
【NEWS】執筆記事公開のご案内自動車・バイク専門メディア「Motor-Fan.jp」にて、当サイトの管理人、佐藤旅宇が執筆を担当した記事が公開されました。本記事は環境活動家/一般社団法人ユナイテッド グリーン代表理事の山田周生さんと共同で制作しました。山田さんはかつてフォトジャーナリストとしてパリ・ダカをはじめ、さまざまなアドベンチャースポーツを取材していました。往年のパリ・ダカファンなら一度ならずとも山田さんが撮影した写真を目にしている事かと思います。かくいう私も10代の頃に氏が撮影したパリ・ダカの写真(当然サハラ砂漠です)を見て、大きな衝撃を受けたひとりです。あれから30年後、まさかこのような形で一緒にお仕事をすることになるとは夢にも思いませんでした。▼ 記...02Jun2025
ラルゴのその後について ずいぶん前に「完成!」と報告したきりになっておりました我が日産ラルゴ ハイウェイスターですが、現在も仕事やレジャーの足として元気に走っております。なぜその後のレポートが滞っていたかというと、作業を依頼したお店のお仕事があまりにお粗末すぎて、公にするのが躊躇われたからなのです。まあ車が車なので、それほど上等な作業をしてもらおうとは思っていなかったのですが、そういう基準で見ても酷かった。50万円以上を支払って色々と作業してもらいましたが納得できる結果だった箇所はほぼゼロ。ちなみに工賃は普通よりはっきり高めです。だから大丈夫だろうと踏んでいたのですが、結果は真逆でした。30Aug2022佐藤旅宇CAR
「愛車」のつくり方(後編)味気ないワゴンより、遊び心のあるバン思いがけず所有することになったものの、いまいち私の好みではないY12型ウイングロードをあまり懐が痛まない予算範囲でカスタマイズしようというこの企画。まずは前回記事でペイントした鉄チンホイールの仕上げから。ラルゴでもやりましたが、サニー用(?)の日産純正センターキャップを墨入れし、メッキ仕上げのナットと組み合わせて旧車テイストに。27Jan2022CAR
「愛車」のつくり方(前編)愛を注がなければ愛車にあらず昨年の春、あるきっかけでY12型日産ウイングロードをタダ同然で入手しました。2012年式で走行距離は約6万5000㎞。状態としては年式なり、走行距離なりってところでしょうか。もう一台の所有車であるラルゴが25年モノの大中古のため、しばらくこいつをファミリーカーとして使用しておったのですが、オーテックのメッキホイールや特大のルーフスポイラー等が奢られた、いわゆる「ライダー仕様」のエクステリアがどうにも好きになれない。走ってもスカスカというかペラペラというか、感性に訴えるものが何もない。まあ根はライトバンですからね。実用の道具としては優れた点も沢山あると思うんですが、趣味として乗るにはちょっと厳しい。で、とっ...21Jan2022CAR
ゴトータケシ流 オートバイ乗りの自転車遊び(第5回)二輪ジャーナリストの後藤 武 氏といえば、オートバイ業界では言わずと知れた実践派の重鎮。おまけに陸・海・空すべてが遊びのフィールドと豪語してはばからないノリモノ遊びのプロでもある。そんなゴトー氏、どうも最近は自転車移動がアツいらしい。となれば『GOGO-GAGA!』が放っておくわけがない。半ば強制的に自転車を手渡し「ゴトータケシ流」のサイクルライフをレポートしてもらうことにした。24Jun2021後藤 武BICYCLE
スーパーカブは肉体の一部であるスーパーカブの魅力を極私的に説くこのところ何かと話題のスーパーカブ。登場から60年以上も経過していながら、未だ実用バイクの分野では敵なしの絶対的なブランドとして君臨してるんだから凄いとしか言いようがない。しかも、ここにきてクールな趣味の乗り物としても人気が急上昇という凄まじさ。昔っからスーパーカブを趣味として乗ってるライダーは一定数いましたけど、それが今やお茶の間(表現が古い)レベルですから。17Jun2021佐藤旅宇MOTO
格安中古車ではじめるクルマ遊び (96年式 日産ラルゴ編) Vol.04ホイールの塗装とタイヤ選び今回のようなライトなカスタムではホイールとタイヤのチョイスが肝心。全体のイメージを決定付ける重要なパーツなのであります。ところがこのラルゴくん。サイズが特殊でなかなか合うものが見つからない。車両重量1.7トン級ミニバンのくせに何とホイールサイズは14インチの4穴、PCD114.3。しかも前後でサイズが違う。もちろん純正スチールホイールはメーカー欠品。走り味が変わってしまう事を気にしないならインチアップする選択肢もあるのですが、わたし的にはなるべくホイールサイズはいじらずに当時の雰囲気を残したい。それで連日ヤフオクをチェックしていたら基本的に同じ車体のC23セレナの純正スチールホイールを発見! 程度も良さそう...15Mar2021佐藤旅宇CAR
ゴトータケシ流 オートバイ乗りの自転車遊び(第4回)二輪ジャーナリストの後藤 武 氏といえば、オートバイ業界では言わずと知れた実践派の重鎮。おまけに陸・海・空すべてが遊びのフィールドと豪語してはばからないノリモノ遊びのプロでもある。そんなゴトー氏、どうも最近は自転車移動がアツいらしい。もちろんそんな面白い話を『GOGO-GAGA!』が放っておくわけがない。半ば強制的に自転車を手渡し「ゴトータケシ流」のサイクルライフをレポートしてもらうことにした。27Dec2020BICYCLE後藤 武